NPO法人 だっことおんぶの研究所

抱っことおんぶの豆知識 抱っことおんぶの豆知識

抱っこひも(ソフトストラクチャーキャリア)

抱っこひも(ソフトストラクチャーキャリア)

日本ではひとくくりに抱っこやおんぶをするものを「抱っこひも」「おんぶひも」と呼びますが、2010年頃から流行っているものは腰ベルトがついたリュックの様に両方の肩にベルトをかけて使用するもの。そのように赤ちゃんを入れるところや肩に掛けるストラップや腰ベルトなどのカタチが整ったものをSSC(ソフト・ストラクチャ・キャリアー:Soft Structure Carrier)と呼びます。
日本には1980年代にはすでにスナグリタイプと呼ばれる、現在のエルゴによく似た製品が輸入されていました。

出典:ベビーエイジ / 婦人生活社 / 1985年10月号

出典:ベビーエイジ / 婦人生活社 / 1985年10月号

 

抱っこひもの歴史

抱っこひもは「子守帯」「子守バンド」などという名称で1970年代には存在していました。当時は赤ちゃんを寝かしておくような状態で使うことが多かったようです。

1980〜90年代の抱っこひも

「スナグリ」は赤ちゃんを暖めたいという発想から設計された抱っこひもで、1980年代前半にたいへん流行しました。
創業者のアン・ムーアさんが、アフリカの赤ちゃんが泣かない理由は布に巻かれて暖められているからだと考えて製品にしました。写真からわかるように、赤ちゃんが入る袋の部分は保温のために二重に設計されています。 このようにSSCは目的をもって企画・設計されている商品が多く、製品をみるとどのような意図をもって作られたのかがだいたいわかります。
エイテックス社の抱っこひもは、1986年に元歌手の山口百恵さんが使用していることが週刊誌で報道され、それを機に広まりました。当時はデニム素材で抱っこひもを作っていることが新鮮で、とてもおしゃれに感じられたそうです。
90年代からは日本のアップリカなどの大手も抱っこひもの販売を始めており、92年にはベビービョルンが日本に進出しました。
一方で1970年代〜90年代は抱っこひもを手作りすることもよく行われており、育児雑誌には抱っこひもの作り方が掲載されることも珍しくありませんでした。

2000年代の抱っこひも

「エルゴベビー」は2003年にハワイ在住のカリン・フロスト(Karin Frost)さんが考案しました。もともとは中国のメイタイ(ベイタイなどとも発音)を元に、ベルトなどを工夫して創作したとされています。日本に本格的に入ってきたのは2008年以降です。
エルゴベビーは創業者のカリンさんがアウトドアでもらくに使える物として作ったと言われています。中国のメイタイにもおなじように腰ベルトーベルトというよりも帯や紐と表現した方がよいかもしれませんーと赤ちゃんの頭にかぶせる四角い布がついています。エルゴベビーでは(過去に)スリーピングサポートと呼んでいましたが、中国でも同じように使っていたようです。

出典:侗族服飾芸術探秘 / 漢聲雑誌70 (上)服飾編 / 張柏如 著

出典:侗族服飾芸術探秘 / 漢聲雑誌70 (上)服飾編 / 張柏如 著
*中国のおんぶひもには様々な形状があります。この画像は一例です。

 

2010年代の抱っこひも

ヒップシートという抱っこひもは90年代にあったポーチタイプによく似ていますが、違うのは腰ベルトの大きさ・厚みと座らせる場所の広さでしょう。
アジア圏で流行ったものが日本に入ってきました。座面が大きいので、赤ちゃんがなかで動きやすくなるのがメリットでもありデメリットにもなります。子どもが腰を反らせた姿勢になると顎が上に向きやすく、顔をあげたまま抱かれている姿勢になりがちです。頚椎によい影響はないので、腰を少し丸くするような姿勢になるよう工夫しましょう。
韓国発の「コニー」はSSCではありません。ハイブリット型と呼ばれています。同様のカタチは1990年代の後半にはありましたが、伸縮する素材になったのは2000年代後半だったようです。米国のK’tan(ケターン)が有名です。簡単に抱っこできる反面、姿勢が崩れやすくなります。伸縮する抱っこひもは耐荷重表記にかかわらず、親子とも快適な姿勢が保ちにくいため小さいうちに使用する方がよさそうです。

 

SSCのメリットとデメリット

このようなカタチのある抱っこひものよい点は、使い方が視覚的にわかりやすいという点でしょう。抱っこひもをみれば、どこに赤ちゃんを入れて、肩や腰のストラップはこれだろうということが予見できます。それぞれのストラップの付け方や調整方法は取扱説明書で確認する必要がありますが、最近では各社youtubeなどを使って動画で説明していることも多いので、よりわかりやすくなりました。

その一方で、使い方が ”なんとなく” わかってしまうために、調整せずに使用している親御さんも多いように見受けられます。SSCの多くには安全ベルトもついているので、禁止行為さえしなければ落下することもまずありません。安全や快適という点には関心を持たなくてもとりあえず使えてしまいます。
SSCは身体にあったものを使い、調整をしっかりすれば快適に使用できますが、どのようにどこまで調整してよいのかがわかりにくいという声を聞きます。赤ちゃんの姿勢と抱っこひもの簡便さは表裏一体と思っていただいてよいでしょう。

ベビーウェアリングコンシェルジュはSSCの装着や説明法についても専門的な訓練を受けています。日本で販売されているメジャーな抱っこひもに関しては、メーカーや代理店から直接使い方指導を受け、ディスカッションを行っています。 動画で装着法を見てもいまいちわからない、ちゃんと装着できているはずなのに赤ちゃんが泣いてしまうとか使用者の肩や腰に負担を感じるということはありませんか?
その抱っこひもがあなたの体型や生活スタイルにあっているか、身体に負担がかかっていないか、赤ちゃんに無理をさせていないか等、気になる点があればベビーウェアリングコンシェルジュにお尋ねください。

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