NPO法人 だっことおんぶの研究所

抱っことおんぶの豆知識 抱っことおんぶの豆知識

ベビーラップ

ベビーラップ

人類は古くから長い布や帯状のものを使って赤ちゃんを抱いたりおぶったりしていたと考えられています。素材は繊維や木の皮など、手に入るもののなかからいろいろなものを工夫して利用したことでしょう。
エジプトの壁画に描かれた絵をみると、肩掛けのスリング状で使っている様子がわかります。ベビーラップ(Baby Wrap)は1972年にドイツのメーカー「ディディモス社」が作りました。当時はおんぶではなく抱っこで使用していたようですが、メキシコの伝統的な布「REBOZO(レボゾ)」にインスパイアされ、スリングのように片方の肩にかけて使っていたようです。その後体裁が整い今のような形状になり、使い方のバリエーションも増えました。
2006年にアメリカで初めて開催された「International Babywearing Conference 06 in Portland」ではベビーラップ使用者よりもメイタイが目立ちましたが、その後2008年の同イベントではベビーラップがすっかり市民権を得ていました。日本では2010年頃から徐々に広まってきました。
ベビーラップは通常ベースサイズと呼ばれる、自分の体格に合った長いラップを用いますが、慣れてくるとショートラップという2サイズほど短いものを使えるようになってきます。ラップは短いものを安全に使いこなせるのが、いわゆる『Cool!』ということになっています。

首すわり前(定頚前)の抱っこ

どの抱っこ紐でも同じですが、くびがすわらないうちは抱っこしかできません。ベビーラップは縦方向で抱っこします。赤ちゃんの姿勢は腰がCカーブ、脚はM字開脚になるように抱きます。頭部は布で支えます。布で包み込むとイメージする方がいらっしゃいますが、後頭部(頭の下半分くらい、場合によっては頭部の斜め半分くらい)をカバーするだけで、頭全体を包むことはありません。
新生児からできる代表的な抱っこは「Front Wrap Cross Carry(FWCCーフロント・ラップ・クロス・キャリー)」です。布をある程度自分のからだに巻き付けた後、赤ちゃんを一旦自分の体にたて抱っこで乗せておくような状態が必要になるため、最初は少し戸惑うかもしれません。

ベビーラップの抱っこ例(FWCC)

その他の抱っこ

ベビーラップは無限といっていいほどたくさんの巻き方があります。
それらはPass(パス)とフィニッシュ(Finish)の組み合わせでできています。

Pass

パスは身体の左右にある布を反対側のどこにどういう巻き方で渡すかというものです。特におんぶしたときに、様々なバリエーションを使います。例えば、子どもの肩から反対側のおしりに向かって布を巻く、子どものおしりを片側から反対方向に包むなどです。布のパスの仕方で子どもをどう支えるかが決まります。

Finish

子どもと自分を巻いてきた布を最後に結びますが、その時の結び方や余った布で身体を支える部分を少しつくる等、布の処理の仕方をいいます。要は最後にほどけないように結びますが、より安全に、より楽しくなるように結ぶ方法です。ベビーラップはジャカード織りでできていることが多いのですが、布が厚いといわゆるエプロンの紐を結ぶようなリボン結びはできません。基本はDouble Knot(ダブルノット)という二重結び(固結び)です。

おんぶ

ベビーラップではSecure Highback Carry(SHBCーセキュア・ハイバック・キャリー:写真右)という安全なおんぶの仕方がありますが、バリエーションが豊かでどれが基本という定説もないようです。簡単なものでは、Rucksack Carry(RCーリュックサック・キャリー:写真左)という方法があります。 SHBCはベースサイズのラップでおこない、RCはショートサイズのラップでできます。

ベビーラップのおんぶ例(左:RC/右:SHBC)

RC_SHBC

ベビーラップのおんぶはいわゆるBack Carry(バックキャリー)という腰で支えた子どもを布で包むようなおんぶと、日本のように背中の高い位置で背負うおんぶがあります。
バックキャリーは子どもの首まで布をすっぽりくるんでしまうため、子どもの位置は低くなります。これはもともとアフリカの人々が腰を深く曲げて前屈姿勢で作業をしたり、長距離を歩く時に行っていた方法です。アフリカの人々は骨盤が前傾しているために、おしりが後方に出っ張るためにそこに子どもを座らせると安定するようです。

日本では子どもの脇から上をくるまないおんぶをしていました(その上から防寒具を羽織る)。日本人は骨盤が垂直なので、おしりが出っ張るということはありません。一方で、深く前屈して長時間過ごすこともできないので、少し前屈した作業姿勢で背中の上部に子どもを乗せることで重心を一体にしているのが合理的だったようです。

 

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